こんにちは。株式会社チェンジデザインのコンサルタント高田淳志です。
「もっと社内のIT推進力を強化しよう!」「ITを活用して作業効率があげよう!」とお考えの皆様に向けて、解決・対応策の手掛かりになればと投稿するものです。お役に立てば何よりです。


【より効率的にチャットツールを使用するためのポイントを解説】
「効率よく利用できている感がないなぁ・・・」「利用が活性化していないなぁ・・・」など、現状からの改善を目指されている方、お気軽にご相談ください。
第1回:チャットツールで本当に業務効率上がってるのかなぁ?
第2回:社内情報共有にチャットツールのメリットを出せるかは運用次第!
第3回:チャットツールのセキュリティは心配しなくてよい?
第4回:チャットツールは多様な働き方の推進(働き方改革)につながるか?

前回記事では、「素早いコミュニケーションを適切に実現できるか?」という観点から、より有効にビジネスチャットツールを使用するポイントや注意事項などを書いてみました。
今回記事では、「効率的な情報共有は推進されるか?」をテーマに書くことにしました。

  • 情報共有ツールとしての活用メリットが得られているか?
  • チャットツールで情報共有を図るにはどのように活用すればよいか?
  • 社内情報の共有ツールとして他ツールと上図に使い分けるためには?

そのような観点で、失敗経験をまじえながら紹介していきます。
テレワークでのコミュニケーションツールとして不可欠なチャットツール。情報共有ツールとしても活用できると、作業効率の一層の向上につながっていくはずです。

チャットツール導入での改善効果と課題

チャットツールの情報共有に関しては、「効果」「課題」ともに発生

はじめに、2019年9月に企業が実施したビジネスチャットツールの利用状況調査結果の一部を紹介します。調査対象は大手企業とのことですが、役職者・一般社員合わせた調査結果なので、ある程度全体像を表せているのではないかと考えられます。

大手企業のビジネスチャットツールの利用状況調査から
「【詳細資料】大手企業のビジネスチャットツールの利用状況調査(2019年9月19日)」を基に作成

上図「チャットツールの導入による改善効果」によれば「複数人での情報共有が容易になった」が34%で2番目に入っている反面、下図「チャットツール導入後の課題」によると「情報量が多く必要な情報を見落とす、見つけられない」が33.6%で2番目となっており、相反するような項目が上位に入っていることが分かります。

出典元で資料全体を見ると分かるのですが、実は、チャットツール導入後に課題を感じる人(全体で40.0%)は、利用期間が長くなるのにつれ、その割合が多くなる傾向が見られます。

  • 使用期間別チャットツールの課題の有無
    • 半年未満:33.8%
    • 半年以上1年未満:47.8%(
    • 1年以上3年未満:48.2%(
    • 3年以上:33.7%(

チャットツールに限らず、業務での利用期間が長くなるのにつれ、慣れや改善が繰り返されて課題はだんだん減っていくような気もするのですが、なぜ課題を感じる利用者が増えていくのでしょう?

情報共有・蓄積につながるチャットツールの使い方を考えよう

今では、ビジネス用チャットツールの種類も随分と増え、多くのクライアントと接していると、Slack、Chatwork、LINE(LINE WORKS)、Microsoft Teams、Skypeなど、さまざまなツールが使用されていることが分かります。

どのチャットツールも基本的な必要機能は実装されていて、ツール機能の差が導入後の課題発生に影響している可能性は小さいと予想します。それでは、この課題はどこから生まれるのでしょうか?

実は、私自身、組織へのチャットツール導入に失敗(効率という面において効果が不十分)したことがあり、「①はじめての導入 ⇒ ②利用の中止 ⇒ ③再導入」というステップを経たことがありました。後で振り返れば、「個人」での利用と「組織」での利用をしっかり区別してシミュレーションし、組織での導入ならではの準備・検討をすべきだったのですが、そういった面があまり考えられていませんでした。

自らの失敗から得たことは、チャットツールを効率的な「組織の情報共有」ツールとして稼働させるためには、次の3つのポイントを整理し、運用ルールの整備が必要だということです。

  • ポイント1:情報の性質(ストック情報、フロー情報)による違い
  • ポイント2:利用者の役割・業務内容による違い
  • ポイント3:利用者のワークスタイルによる違い
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チャットツールはプライベートでも使用していますが、口頭の代わり的な会話ツールとして使用しているので、後から検索して情報を探す機会はほとんど発生しないし、自分に関係ないやり取りを追っていくようなことも必要ない。同じチャットツールでも利用目的が違うのだから、ちゃんとルールを決めないとダメなんですよね。

情報の種類や利用者を意識したチャットツールの使い方が鍵

それでは、各ポイントを一つずつ確認していくことにします。

ポイント1:情報の性質(ストック情報、フロー情報)による違い

社内に飛び交うさまざまな情報の共有を図るためには、その情報が「ストック情報」「フロー情報」のいずれなのかによって区別して扱う必要があります。

ストック情報とフロー情報

ストック情報
情報資産として蓄積し、今後の活用に備えるべき情報
例)マニュアル、日報などの活動ログ、会議資料、業績レポート、顧客情報など
フロー情報
その場限りで利用できればよく、時間の経過により不要となる情報
例)口頭代わりの気軽な連絡・相談、システムなどからの自動通知など

プライベートでやり取りするチャット内容などは、「フロー情報」が多く、そしてすぐに情報としての寿命を終えるのですが、ビジネスシーンでの「フロー情報」はやがて「ストック情報」に変化する(または、変化させるべき)ものがあります。

例えば、チャットツールで次のようなやり取りが発生したとしましょう。
Aさん:「今日、右端に座っていた、X社の担当者情報知ってる人いる?」
Bさん:「総務部購買担当 山田一郎さんです。」
Aさん:「ありがとう。じゃ、その肩書きでお礼のメール送っておくー!」
これで、今回の「肩書きを添えた宛名でメールを送る」という用は足りました。

本来は、社内の顧客データベースを参照する・登録するといったプロセスが発生すべきタイミングなのですが、それを省いてチャットツールで済ませてしまったために、
●顧客データベースに登録されている情報か知る。
●顧客データベースに登録されていない情報を登録する。
機会を失い、この情報はストック情報として蓄積されるべきなのに、フロー情報のまま流れていってしまうことになりました。

誰かの記憶に残っている間は迅速なやり取りで解決できるのですが、暫くの時間経過後や他の利用者にもその情報必要になった時に、「ストックされていない」→「大量のやり取りが残るチャットツールを検索(この場合はどうやって検索?)」または「名刺の山から大捜索」が発生し、かえって業務効率が落ちる事態を招いてしまいます。

こういったことが、導入後しばらく期間が経った後に「情報量が多く必要な情報を見落とす、見つけられない」という課題を発生させる一因になっていると考えられます。フロー情報のままで済ませてしまって良い情報、情報の利用期間や範囲を判断しながらきちんとストックしておくべき情報を区別して、チャットツールに加えて必要な対応ができるような環境作りが大切なのです。

ポイント2:利用者の役割・業務内容による違い

「チャットツール導入後の課題」に挙がっている次の3つ
●4番目:誰が何をどこまで確認しているかわからない
●5番目:来客中や深夜・休日等の対応できない時に連絡が来る
●6番目:確認や承認が本当に取れているのか不安になる
については、部下の活動の様子を監督・指導する立場の管理職や外出や打ち合わせ機会が多い営業職、クライアントとの窓口担当者などが多く感じる課題のように見えます。

ほとんどのチャットツールは、スマートフォン用アプリも合わせて提供していますし、わざわざモバイルPCを持ち出さなくても「物理的に」チャット内容を確認することは可能なのですが・・・。

  • 1件の投稿を長々と書かれると、狭い画面では大量のスクロールが発生
  • 全員宛ての内容ではないのに、投稿者の利便性優先で「全員宛て」を多様されると、大量の情報を見なければならない利用者にとっては不便
  • 元の投稿に対して、返信形式やスレッド形式を活用して応答していかないと、後から纏めて読む時に全体像を把握するのが困難

上記は、フルタイム社内作業といったスタッフが多い組織で発生しがちなポイントです。広いディスプレイでチャット画面を使えますし、投稿の都度、業務しながら斜め読みすることも簡単、「なんだろう?」と疑問が湧いたら口頭で尋ねてすぐに解決できますから、あまり不満を感じずに済んでしまうのです。

「せっかき気軽に使えるようにチャットを導入したのだから利用も自由に、気軽に」という方針に反対はありません。ただ、何もルールを決めないと、便利さ100%状態の幸せなスタッフがある一方で、便利さ20%状態の不幸なスタッフが発生してしまうかもしれません。

組織全体で情報共有を図っていくには、部分最適(自分最適)ではなく全体最適な状態を達成できるよう、いろいろな業務・役割の担当者がいることを前提に、互いの業務や活動に対する想像力を働かせながら、最低限のルールを決めておくことが大切なのです。

ポイント3:利用者のワークスタイルによる違い

働き方改革の一環として、「フレックスタイム制」や「時差出勤制」を導入している企業もあると思いますが、実は、「フレックスタイム制」の導入には減少傾向が見られます(私は増加傾向と思い込んでいたので、意外でした)。

フレックスタイム制を導入している企業の割合の推移
フレックスタイム制を導入している企業の割合の推移

フレックス制のデメリットとして、
●労働時間管理(勤怠管理)が複雑
●会議がコアタイムに集中する
●チームワークの乱れや、部門間の不公平発生
●朝型よりも、夜型に合わせてスケジュールされることが多い
などが挙げられています。
チャットツール利用時、「自分は出社日だが相手は休暇中」「自分は業務時間だが相手は退社後」のような場合に、上記のようなデメリット発生を回避しながらの情報共有をどのように行うかは大きな課題になり得ます。

チャット投稿の通知先に休暇中の相手を含めれば反応を促してしまうかもしれないし、一方、何の通知もしないと次出勤機会に気付きづらくなってしまうかもしれない。

そんな状況も考えながら、自分の業務時間外は基本的には「見なくていいよ」と決めておくとか、本当の緊急連絡は通常使用するチャットツールとは別の手段で連絡するとか(そうしないと、チャットを読まないと区別できませんから)、お互いのプライベート生活を守るための配慮をルールに含めることが大切なのです。

用途に合わせたツールの使い分けで、情報共有を確実に

「継続的な」情報共有を達成するためには、ここまでに書いたポイントなど、導入組織に合わせたルール作りは欠かせません。

チャット(会話)ツールは、「フロー情報」のやり取りに最適化して機能が用意されていますから、「ストック情報」のためには、別途のITツールを用意するのが良いでしょう。

2点目と3点目のポイントについては、ルールやマニュアル用意で解決できそうです。
ただ単にルール策定するだけではなく、「何のためにそうするのか?」「どのような背景でそう決めたのか?」など基本的な考え方や方針まで含め共有しておくと、新しい検討事象が発生しても、それぞれが「今回はどうやって情報共有しよう?」と自発的に考えながら、適切な対応を行うことができるようになります。

自分たちで時間をかけてそのような文化を醸成するのも良いと思いますし、チャットツールの活用を含め、統合的に組織内の情報共有環境を運用してきた有識者などの外部スキルを活用して時間短縮を図るのも良いでしょう。

ベストな情報共有の方法を検討してみてください。

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